診療科の細分化で適切な医療を受けられる反面、患者が迷うケースも増加

総合病院のホームページで「診療科案内」のページを見てみると、非常に多くの診療科があることがわかりますが、その表示(標榜科)は法律で定められています。

開業医の標榜数は2つまで

医科では内科、外科、小児科、皮膚科、眼科など20の診療科を単独で標榜することができます。麻酔科を標榜する場合は、診療科とは別に厚生労働省への許可申請が必要となります。

医療の高度・専門化が進んだ今日、20の標榜科だけでは提供できる医療を詳細に示すことができないため、これら20の単独標榜科に組み合わせた診療科が誕生しました。

単独診療科に組み合わせられる単語は@臓器や体の部位、A病状や病気の名前、B患者の特性、C医学的処置の4つと決められており、順に具体例を挙げてみると、@循環器内科、呼吸器内科、消化器内科、血液内科、脳外科、呼吸器外科、A腫瘍内科、アレルギー内科、糖尿病内科、B小児血液内科、女性内科、老年内科、Cペインクリニック内科、整形外科、心療内科、などです。

診療科が細分化されたことで、患者は自分の病気や特性にあった診療科を受診することができるようになりましたが、一方で細分化しすぎてどこを受診すればよいかわからないといった声も聞かれるようになりました。この問題を解決するため、近年は適切な診療科を選択してくれる総合診療科を新設する病院が増えてきました。

その他、数が多くて問題となっているものに、専門医の資格が挙げられます。現行の制度は各学会が独自に審査基準を設けており、55資格が表示を認められています。早ければ2017年度には中立的な評価機関が資格基準の設定と審査を行う新体制に移行する予定です。

同時に新たな専門資格として総合診療医が加わることになっており、総合病院でさまざまな症状を訴えて来院する患者のコンシェルジュのような役割を担う医師や、在宅医療で内科・外科を問わずに診察を行う医師が資格を取得すると思われます。

50種類以上ある専門医は新しい評価制度がスタートする予定です

医師は、一般企業で働くサラリーマンのように「定年」がありません。生涯現役を目指して頑張っている医師もいれば、40歳代前半で開業し、60歳代半ばで後進に道を譲り悠々自適な生活をしている医師もいます。

臨床派は関連病院で勤務を続ける

どんな医師人生を歩むにしても、そのスタートラインに立つのは、医師国家試験に晴れて合格して研修医になったときです。

専門に関係なく全医師に2年間の臨床研修を義務化した臨床研修医制度が2004年に導入され、研修先の病院を自分の意思で選び、面接等の試験を経て研修先が決定されるシステムになりました。

配属1年目の研修では、内科、外科、地域医療の必修科目を学び、2年目からは自身の専門とする診療科目を勉強します。3年目以降の後期研修は、科目によって研修期間が異なります。

日進月歩の医療の世界では、医師として独り立ちができるようになった後も研鑽が求められます。スペシャリストとして専門医を目指す場合は、専門医認定の要件(特定科での臨床年数、症例数、論文、学会参加など)をクリアーするための実績を積む必要があります。

なお、専門医資格は2014年現在で50以上もあり、各学会が定める認定基準にバラつきが大きいこと、数が多すぎることなどの問題が以前から指摘されてきました。認定基準が非常に緩く、合格者を増やすことにより学会の数の力で業界内での発言権を強くしようという狙いがあるのではないかと噂される学会もあるようです。

これらの声を受け、従来の認定基準は厚生労働省が認めた学会が独自で設定していましたが、2017年度からは第三者機関が専門医の認定・更新基準などを決定する新しい評価制度がスタートする予定です。